多くの社長は社員に「やらせよう」という考えが働く。それがトップダウンのマネジメントですね。勿論仕事をしてもらうために雇用しているのでその考え方が悪いわけではありません。むしろ、今までの時代はその考え方だからこそ結果を出すことができていたとも言えます。

逆に、ボトムアップのマネジメントも組織の構造はピラミッド型になっているといった部分では同様に、上下の縦型の組織構造と言えるのですが、このような構造の組織では今までのような結果が出なくなってきている企業がここ最近増加してきています。

特性マネジメントでは、上下の組織構造ではなく、同心円状に有機的に、それぞれが認め合って支え合う関係性のうえで成り立つフラットな組織構造をベースとしています。

特性マネジメントが誕生した背景には、移りゆく時代の変化に伴う人々の生活スタイル、価値観、人間関係などが大きく影響しています。その時代ごとに3つにカテゴライズし、組織マネジメントの移り変わりとその有用性について読み解いていきます。

縦型組織構造の限界―なぜ縦型組織では結果が出にくくなっているのか

縦型組織は、司令塔である社長や上司が現場の細かい動きを把握していなくても予め立ててある計画通りに仕事を進めさせ、成果を上げていくには非常に効果的な組織形態になります。一つの方向に向いている価値観の時代背景のときは結果が出やすい方法であると言えます。

だからこそ戦後のモノが無い時代では縦型組織がマッチしたわけです。

例えば、何を製造するかが決まれば「作れば売れる」わけですから、いかに効率を良くするか、生産性をどれだけ上げるかに焦点が当たるのも言うまでもありません。

しかし、2008年のリーマンショック以後からVUCAの時代と呼ばれ、物事の変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が象徴的な時代となり、先が見通しにくい時代だと言われだしたとき、世の中の価値観は、方向性自体がわからないという時代へと変化してきていきました。

となると、戦後の価値観で結果が出ていた縦型組織構造で突き進んでも結果が出にくくなってきたのです。縦型組織の限界が顕わになってきたのです。

これからは、現場のリアリティが瞬時に変わる時代。

現場で判断して動ける状態を作らなければ、いくらきっちり計画を立ててもその通りに物事が進まない時代であり、計画通りにいかず結果が出なくなってきているのです。

そのため、リーマンショック後にはフラットな組織(文鎮型組織)を推奨するようになってきているのはないでしょうか。

新時代への移行期には適しているのですが、結局は、司令塔の計画に基づいて実施するという要素が残ることと、組織間の横の連携がうまくいかないため、どうしても現場で自主的に判断して動くという発想が生まれません。

では、どのようなマネジメントであればVUCA時代に適した組織が築けるのでしょうか?

3つの時代背景とマネジメント―時代背景から見るマネジメントの移り変わり

新時代のマネジメントを説明する前に、時代背景から見るマネジメントの移り変わりについて触れておきたいと思います。

時代とともに人々の価値観が変わり、その価値観に沿ったマネジメントに移行していくことは大変重要なことです。

その代表的なものが、男女雇用機会均等法であり、ハラスメント対策や、働き方改革です。

ここでは、時代背景を大きく3つにカテゴライズし、その時代に行われていたマネジメントについて整理していきたいと思います。

まずは、戦後復興期(高度成長期)です。

焼け野原になっている状態からの復興ということで、物を持つことで幸せを実感する時代になりました。

冷蔵庫や洗濯機など、作れば売れる時代です。

そういう価値観の元では、生活の上で困っていることを補うために物を手に入れること、つまり一つでも多く物を作り届けることが求められました。そのため一定の品質で統一された量産品が一番求められました。

この時代には、前述したとおり縦型組織のマネジメントで、経営陣が決めた計画通り進めればうまくいき、いかに生産性をあげるかが重要なポイントでした。

働く人のモチベーションは、金銭、そして物質的に豊かになること。

現在のブラック企業よりもはるかに労働環境は悪いなかでも、モノが増えていくことを喜びに頑張れた時代とも言えます。

いわゆる高度経済成長期には重厚長大と言われる鉄鋼業・セメント・非鉄金属・造船・化学工業などの産業が増え、時代の成長とともにコンピュータ、ゲーム、百貨店、サービス業へと産業と働き方が大きく変化していきました。

そして、どんどんモノが増え生活も豊かになる方向へ進みましたが、バブル崩壊後に一転。

人々の価値観はモノではなく精神的充足も必要だという方向にシフトしていきます。モノで幸せを実感することができにくい時代への突入です。心の充足を求め、非日常感を得られる旅行やゲームが普及しました。

産業としては、サービス業と言われる、金融業、商社が発展し、これまでの縦型組織では、働く喜びに繋がらないといった人が増え、マネジメント大混乱期と言えるでしょう。

さらにはリーマンショック後です。

その頃、メキメキとチカラをつけIT巨大産業産業GAFAが人々にもたらしたものは、SNS上での「いいね!」依存。

お金やモノよりも人間関係が大事で、繋がっている感がなければ心が満たされないという価値観で、SNSで「いいね!」をしてもらうことで、自分の存在を受け入れてもらっていると思える人が増えてきました。

「いいね」とは共感してもらえているという実感を得ることができる手段になったのです。

つまり、共感しあえる関係により幸せを感じるという価値観へとシフトしたのです。

こうなると、上下関係が成り立ちにくく、共感しあえていない関係性で上司がやらせようとして強めのコミュニケーションを取ると、パワハラだと受け取られてしまう。全てを共感で動かす時代に入ったと言えます。

この新しい時代では、より共感できるビジョンや社会的意義、思いやりや共感力が重要になってきています。それに合わせてマネジメントのやり方も変えていく必要があるのです。

新時代のマネジメント―特性マネジメントに興味を持たれる理由

戦後から大きく価値観が変化してきた今、共感や社会的意義をベースにやりがいを見出す時代となりました。

「共感」

これは、お互いを受け入れていく過程において起こるものです。

となると、その相手との違いを受け入れる必要があります。

では、違いとは何か?

それは、人それぞれが持って生まれた先天的な「特性」と、生活環境から生み出された後天的な「特性」です。これをお互いが知って受け入れることで共感が生まれ、歩み寄り共に同じ方向性へと進んでいくことができます。

特性マネジメントでは、人が歩んできた人生そのものを振り返り、先天的及び後天的なその人の特性を見出すワークを全社あるいは各部署やチームごとに行うことで、互いを知って受け入れ共感するプロセスを踏んでいきます。

人と繋がっていたい、自分の存在を受け入れてほしいという時代のニーズにマッチしやすく、人のモチベーションが上がりやすいことも特長の一つですし、働くことに対しても自分自身の人生と密接になり、社会的意義に繋がるものとなります。

なぜ特性なのか?―自分の人生を生きている実感を

「特性」は、持って生まれた先天的なものと、後天的に生活のなかで培われたものだとお伝えしました。

それはもう、存在価値そのものなのです。

この「特性」を、本人がまず自覚して受け入れること。そして、周囲が自覚して受け入れることでお互いを受け入れ合い、存在していること自体が価値であり、社会や組織の役に立っていることが実感できるようになります。

その結果お互いの人生の背景を受け入れることになり、心から生きていて良かったという喜びを実感することができる組織に生まれ変わるが特性マネジメントなのです。

戦後からの時代の移り変わるの結果、現代のマネジメント法として、特性マネジメントはこの共感時代にとって大変有効かつ、一人ひとりが他者との繋がりのもとで自分の人生を生きていくことに直結します。

組織に属する方達全員が自分の人生を生きることで、仕事に向き合う姿勢も能動的になります。

心から誰かに喜んでもらいたい、共にそれを育みたいという本来の欲求に基づいて、創意工夫できる環境づくりに特性マネジメントを活用いただきたいと考えています。